トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことに対して、
世界的に反対の声が上がっています。
エルサレム問題は中東における非常にデリケートな問題ですが、
まずエルサレム問題を見ていきながら、
トランプ大統領が行った決断の背景と言われているものを見ていきたいと思います。
目次(複数ページに分かれた記事もあります)
エルサレム問題とは何か?
まずエルサレム問題から見ていきたいと思いますが、
エルサレムの「旧市街」という場所は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地がある場所になります。
ユダヤ教にとっては最も神聖な場所として「嘆きの壁」があります。
(出典「photoAC」)
またキリスト教にとってはイエス・キリストの墓があるとされる「聖墳墓協会」があります。
(出典「PIXTA」)
またイスラム教にとっては、預言者ムハンマドが昇天した言われる「岩のドーム」と礼拝所の「アルアクサ・モスク」があり、
イスラム教にとってエルサレムは、マッカ(メッカ)、マディーナ(メディナ)に次ぐ第三の聖地と言われています。
(以下の写真は「岩のドーム」になります。)
(出典「photoAC」)
このエルサレムついて国連は、国連管理下に置かれた独立した国際都市として、いずれにも帰属しないとの立場を取り続けてきましたが、
1967年の第三次中東戦争(六日間戦争とも言われます。)によってイスラエルが「旧市街」を含む東エルサレムを占領することになり、
1980年にイスラエルは、エルサレムを「首都」と宣言することになります。
一方、パレスチナはエルサレムを将来の独立国家の首都にしたいと主張しています。
こうした問題がありますので、世界各国の大使館はエルサレムではなく、テルアビブというイスラエルの都市に置かれていて、
これは世界各国は、エルサレムをイスラエルの首都とは認めていないことを示しています。
またこのエルサレム問題に関しては、これまでアメリカもイスラエルの首都と認めない態度を示してきました。
1995年にはアメリカ大使館をエルサレムに移転させる法案がアメリカ議会で可決されましたが、
中東和平交渉を重視して半年に一度、
移転延期の文書に大統領がサインし続けるという慎重な対応を示してきました。
トランプ大統領も一度はこのサインを行っています。
エルサレム問題 トランプ大統領はイスラエルの首都と認定 その背景にあるものは?
しかしトランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認定する声明を出し、
現在はテルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転させるように、国務省に指示を出すことになりました。
これに対しては中東で混乱が起こることが懸念され、世界的にも反対の声が上がっています。
ではなぜトランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定することになったのでしょうか?
まずトランプ大統領は選挙の際に、
「ユダヤの人々の永遠の都エルサレムに大使館を移転させること」を公約に掲げていました。
またその他にもメキシコの壁やオバマケアの見直しも公約に掲げていましたが、
これらの公約は議会の反対などがあり実現に至っていません。
ただエルサレムへの大使館の移転は、すでに議会の了承が得られていますので、
大統領がこれまでのように移転延期の文書にサインをせずに、指示を出せば移転させることが実現可能なものでもあり、
公約の実現のため、と指摘されています。
またトランプ大統領の支持者向けという面も指摘されています。
一度は移転延期の文書にサインしたトランプ大統領に対して、一部の支持者から苦情があったと言われています。
ユダヤ系の人たち中には「一部に」強硬な人たちもいて、議会に圧力をかけることもあり、
そうしたユダヤ系の人たちの支持をつなぎとめるためにこの判断が下されたとも言われています
また家族がイスラエル寄りであることも指摘されています。
トランプ大統領の娘のイバンカさんと、夫であるクシュナー氏がユダヤ教徒で、
クシュナーシはイスラエルのネタニヤフ首相とは子供の頃からの親交があると言われていますし、
イバンカさんもフロリダ州で開かれたユダヤ人の集会では、
「あなたの父はエルサレムを唯一の首都にすることを実現させますか?」との問いに、
「100%エルサレムは不変なる首都です。」と答えたと言われています。
またロシア疑惑が指摘される中で、その疑惑隠しが目的だとも指摘されています。
トランプ大統領の側近だったフリン前大統領補佐官が訴追され、
司法取引の結果、ロシアとの接触は中枢幹部が指示したことを述べていて、
今後は娘婿であるクシュナー上級顧問の関与が焦点になると言われています。
ロシア疑惑に関してはアメリカで大きくクローズアップされているとも言われていますし、
そうした中で注意点をそらす目的で、このタイミングでのエルサレムの首都認定なのではないか、とも指摘されています。
これらの指摘を見ていくと、それが中東のためというよりも私的な理由と思える面は否めないものがあります。
(参考:モーニングショー、読売新聞、イスラームから見た「世界史」)
終わりに
エルサレム問題がそもそもデリケートな問題だけに、
これまでのアメリカ大統領は高度な政治判断として、移転延期の文書にサインをしてきたのだと思いますし、
政治の世界では玉虫色の解決という言葉を耳にすることもあり、
以前は個人的にはそうした玉虫色の解決というものには、ハッキリとしないという印象を持っていましたが、
様々な要素が複雑にからみ合う問題もあると思いますので、政治の世界ではハッキリとさせないことが良い場合もあるように思います。
エルサレム問題はユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教の聖地が関係している問題でもあり、
またパレスチナ問題とも関係してくる非常にデリケートな問題で、
個人的にはエルサレムはどこの国のもの、またどの宗教の人たちのもの、とは明確にせずに、
それぞれの宗教を信じている人たちが、比較的自由に行き来することができる場所になればとは思いますが、
これまでの経緯や現場で生きてきた人たちが抱えてきたであろう葛藤などを考えると、
解決することが非常に困難な問題であることは確かだと思います。
また今回のトランプ大統領の判断で、エルサレムでの混乱も伝えられていますが、
中東という日本から遠く離れた場所でのことではありますが、
イスラム国によるテロの脅威がネットを通して世界的に広がりを見せたように、
遠い世界で起こったことは全く無関係、とは言い切れない社会に私たちは生きている面はあると思いますので、
難しいことですが、できる限り自分のことのように思いを馳せて世界の問題にも目を向けていただければと思います。